特集 福岡の地産地消と食育を考える

農産物の生産現場にいる私たちの農産物に対する想いや考えをお伝えするために、情報誌アグリふくおかより地産地消と食育に関する特集を抜粋し掲載しています。
詳しくは「情報誌アグリふくおか」をご覧下さい。

農家のチカラ

「佐賀牛や鹿児島牛は聞くけど、福岡は牛のブランドはあるの?」
「福岡県で牛は生産されているの?」という声を聞きます。
今回は、筑紫野市で「博多和牛」の生産者で「三宅牧場」経営者・三宅貞行さん、静代さん夫婦を訪問しました。ちなみに静代さんが社長です。
牛舎を訪れた時、「牛が逃げた〜」との声が。と同時に、目の前をノッシノッシと黒牛が。間近で見る牛は、デカイ! の一言。その後、逃亡牛は、無事に指定のお部屋(牛舎)へ連れ戻されました。
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就農のきっかけ

 父親の代からの肥育牛農家です。農家の長男は、小さいときから農業を手伝い農家の「跡を継ぐ」のが自然の流れ。福岡農業高校卒業後、自分のやりたい農業が見つかったらやっていこうと思って継いだ農業が「牛飼いだった!」。当時、親から任された12頭から始まり、就農して38年目の現在300頭へと拡大しました。

畜産の3つのショック

 1番目は、昭和48年第4次中東戦争の影響により穀物の値段が激高した「オイルショック」。畜産農家はほとんど縮小傾向になった中、逆に規模を拡大。
 2番目は、昭和53年日米農産物交渉で牛肉・オレンジ等の輸入枠が拡大した「牛肉オレンジの自由化」では、海外の牛肉と競合する乳オスから黒毛和牛に品種を転換。(この年に、福岡県内のJAで品種転換)
 3番目は、平成13年国内初のBSE感染牛が発生し、消費者の食品への不安が一気に拡大した「BSE」では、一農家ではどうしようもないと判断し、農家を結集するために肉用牛農家の組織化へ向けての働きかけを。(平成15年博多和牛ブランド化へ向けて「JA福岡県肉用牛生産者の会」が設立)
 自分自身、農業に対する思いが強く、深まっていくに従って、どうやって農業を継続させていくかを考えてきました。結果的には、就農後、4HクラブやJA・JA青年部等の様々な活動や役員等を経験することで学習したことが「3つのショック」でも生かされましたね。

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安全・安心へ

 BSE問題が生じなければ、消費者とのつながりを考えることはなかったでしょうね。逆に、BSEをきっかけに消費者の方々に、食の安全・安心をもっと追求してほしいですね。「私たちが、どういうものを食べるのか、食べたらいいのか」を。
 生産者は、安全性の面ではとても敏感ですよ。小売店(スーパー等)で牛の経歴が追跡できるトレーサビリティの仕組みも整っています。私たちは、消費者の顔を意識しながら牛を育てています。
 また、積極的に環境へも取り組み、堆肥は地元の田畑等へ還元し、福岡の美味しい農産物づくりに役立っています。

農業の魅力は?

 ズバリ、自分で企画立案、実行したら、結果がでることです。自分達が生産したものを、娘が三宅牧場農産加工所「まきば」で加工し販売することで、消費者の顔が見え、目の届くようになりました。
 まず、農業ファンになったのは、誰だと思います?  それは、「まきば」の従業員さんたち。働いている人たちが野菜が新鮮で美味しくてびっくりしているんですよ。
 春には、お餅に入れるよもぎを従業員で摘みますが、1年分の使用量を摘むから、毎日毎日摘んで加工・保存します。手をかけ、体験しているから、よもぎ餅の原材料から価格設定までの説明ができるのです。
 従業員皆が、農業に関心をもち、「まきば」で働いていることに誇りをもっている。これは、大きな成果です。

農業のもつ力

 三宅牧場では、牛の堆肥を1袋100円で販売しています。
 お客さんは、60歳代がほとんどで、家庭菜園用に購入。「野菜を作るなら三宅牧場の堆肥を買うこと! まずは、5袋から!」とベテランがニューフェイスへとお客さん同士が教えあい情報交換が盛んに。口コミでお客さんが増え、堆肥がなくなることもあります。
 野菜づくりを通してのお客さん同士の交流がはじまった。これは農業のもつ力にほかならないと思います。

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食は命=食育

 食は『命』です!もっと「食べもののことを考える、選ぶ、食べることをキチンとしないと、自分の命の価値はそこで決まる」と思っています。自分の命の価値は、食事の仕方で決まる。お腹がすいたから口に押し込むだけだったら、あなたの命もそれだけだと。
 皆さんに、農業・農産物を理解して食べてもらうことが「食育」だと思います。そこに、生産者がいかに関わっていくのか。皆さんに農業体験をしてもらいたけど、体験もできにくいので、例えば子どもと一緒に買い物をし、野菜を手に取らせてかごに入れる。野菜の感触や、重さ、香りを五感を通して感じてもらいたい。そこから、食への関心は始まると思います。
 安いものには、安い理由があります。もう少し考えて食べることが必要ではないでしょうか。レストランでも、高いものには高い理由が。そこには、原材料や味へのこだわりがあるはずです。

これから…

 これからは、農業者同士、お客様、地域と楽しく関わりを深めていきたいです。
肉用牛生産者の会では、自分の農業を確立することで、生産者の顔が変わってきました。若い農業後継者たちの顔がやる気の顔に、また団結力も出て、皆が切磋琢磨するようになってきました。良い傾向ですね。また、消費者へも生産者が頑張っている姿を見せたら、消費者の心に響くと思っています。

photoインタビューの最後に

 「まずは、自分でやってみることですよ」と夫婦ともリーダーとして実践してきた顔に自信が漲ってました。
 −夫婦の趣味は?
趣味は、牛飼い(笑)。夫婦同じ目線で農業やっていることが楽しいと、なんともうらやましいご夫婦です。日ごろの会話を絶やさない、理論を戦わせるのが、円満の秘訣とのこと。
 三宅さん夫婦揃っての会話を楽しめた2時間でした。
 なお、三宅さんの博多和牛は、2007年度第2回枝肉共励会において最高位の金賞を受賞されました。

 

 

生産から加工・販売まで

三宅さん夫婦は、筑紫野市で黒毛和種300頭、米と大豆5haを経営されています。米ともち米は、牧場に隣接された娘の静恵さんが共同経営する三宅牧場農産加工所「まきば」で加工・製造され、お餅やおにぎり、おこわ、おはぎ等として販売されています。もちろん、博多和牛も販売されています。生産から加工・販売まで一貫して、お客様へ顔の見える関係が作られています。

三宅牧場

住所:福岡県筑紫野市大字常松2
TEL:092-926-4353
HP:http://www.miyake-farm.com/

(左上)博多和牛の商標登録証。
(右上)「まきば」で販売されている博多和牛。
(下)三宅牧場農産加工所「まきば」

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